なぜ、ダチョウなのか?
これまで、インフルエンザの抗体は、
ニワトリやウサギ、マウスなどから造られてきました。
非常に高価で、1gあたり数億円しています。
ダチョウの卵から取れる抗体は、
わずか10万円。
抗体が取れるまでの期間も2週間。
「もし、人から人へ感染する新型のインフルエンザが発生しても、
ダチョウの卵を使えば安価なワクチンを、素早く、大量に生産できます。
パンデミック(感染症の爆発的流行)の切り札になり得る!」
(塚本康浩教授・談)
2013年12月のインタビューですが、
このとき塚本康浩教授はすでにこう述べているんです。
そしてまさに今、世界を破滅に導くパンデミック(感染症の爆発的流行)に、
文字通りの切り札としてつくり上げています。
それでも、なぜ塚本康浩教授はダチョウを?
ダチョウの抗体が安価ですぐに作製できることはわかったのですが、
そもそも、塚本康浩教授はなぜダチョウに注目したのでしょうか?
鳥好きからダチョウ好きへ
もともと、塚本康浩教授は鳥の病気の専門家でした。
幼少の頃より鳥が大好きでしたが、
かわいがっていた桜文鳥を自分の不始末で死なせてしまい、
それがきっかけで獣医学の道に進んでいます。
塚本康浩教授は、大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、
カナダ・ゲルフ大学獣医学部 客員研究員を経て、
1998年、大阪府立大学大学院農学部生命科学研究学科 博士課程 獣医学専攻を修了。
これまで、家畜として飼育される家禽類、
特にニワトリの病気の研究を行ってきました。
獣医師であると同時に獣医学博士でもあります。
不純な動機でダチョウの研究をスタート!
塚本康浩教授は、あるとき、
ダチョウを飼育しているダチョウ牧場を知ります。
ダチョウを目の当たりにした塚本康浩教授は、
「ダチョウの研究は世界的にもあまり進んでいない。
うまくいけばダチョウの行動観察で論文を書けるかもしれない」
という【不純な動機】(本人談)でダチョウの研究を始めることになります。
ダチョウはとんでもない鳥だった
しばらく研究して、ダチョウのことが良くわかってきました。
ダチョウは、アホな鳥だ、と。
ダチョウは常に右に左に動きまわっていますが、
それは理由があってそのような行動をとっているのではありません。
何も考えずにただフラフラしているだけ。
崖の上によじ登って、降りてこれなくなってパニックしているダチョウもいるほどだ、
と塚本康浩教授は述べています。
ダチョウの行動に規則性を見つけるのは、
無謀な試みだと気がつくまでに時間はかかりませんでした。
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「ダチョウの長生きの秘密」